平成27年度税制改正において、「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」が創設されました。これまでは、マレーシアに移住した後、上場株式を売却した場合には、マレーシアでは株式の譲渡所得が非課税の為、日本に申告義務がなくなった後で譲渡益を実現させても納税の必要がありませんでした。
含み益を抱えたままマレーシアに移住して譲渡所得の納税を回避することができたのですが、平成27年税制改正で不可能となりました。
国外転出時課税制度(正式名称:国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)は、平成27年7月1日から施行されました。この制度は、国外転出(日本国内に住所及び居所を有しなくなること)をする時点で1億円以上の対象資産を所有している人に対し、その時点での時価で資産を売却したとみなして、その含み益に所得税を課税するものです,。
また、本人が日本を離れる場合だけでなく、国外に住む親族等へ資産を贈与したり、非居住者が相続や遺贈によって資産を取得したりした場合も、同様の課税(国外転出(贈与・相続)時課税)が行われます,。なお、通常の所得税のほかに、復興特別所得税(所得税額の2.1%)も併せて課税されます。
国外転出時において以下の2つのいずれにも該当する居住者が対象となります。
(1)所有している対象資産の価額の合計が1億円以上
(2)原則として国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を 有していること。
有価証券(株式、投資信託等)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引・デリバティブ取引が国外転出時課税の対象資産となります。
コメント
土地、建物、仮想通貨は対象資産に含まれていません、しかし非上場株式は対象資産に含まれる点に注意してください。マレーシア移住時に非上場企業のオーナー様が見落としがちな論点です。
申告の手続きは、出国までに納税管理人の届出をするかどうかで異なります。
• 納税管理人の届出をする場合: 国外転出の日までに届出書を提出すれば、翌年3月15日までの確定申告期限までに申告と納税を行えば済みます,。この場合、*納税猶予の特例を受けることが可能になります,。
• 納税管理人の届出をしない場合: 出国の日までに、その年の1月1日から出国時までの所得について準確定申告を行い、納税を済ませる必要があります,。
税額は、対象資産の種類に応じて譲渡所得、雑所得、又は事業所得として計算されます。
• 計算の基準: 原則として、国外転出の時の価額(時価)を譲渡収入とみなします,。
• 申告時期による例外: 納税管理人の届出をせずに出国前に申告を行う場合は、出国予定日から起算して3か月前の日の価額で計算することができます。
• 価額の算定: 上場株式であれば金融商品取引所の最終価格、未決済信用取引であれば出国時に決済したものとみなして算出した利益額などが基準となります。
この制度には、高額な税負担を和らげるための措置や、帰国した際の特例が用意されています。
• 納税猶予制度(最大10年): 出国までに納税管理人の届出を行い、担保を提供することで、最長5年間(申請により10年間)納税を猶予できます,。猶予期間中は、毎年継続適用届出書を提出する必要があります。
• 帰国による課税取消し: 出国から5年(延長時は10年)以内に帰国し、その資産を引き続き所有している場合は、更正の請求を行うことで課税を取り消すことができます。
• 時価下落時の減額措置: 猶予期間中に資産を売却した際や、猶予期限が来た際の価額が出国時よりも下落していた場合、売却時の価額等で税額を再計算(減額)できる措置があります。
• 二重課税の回避: 出国先の国でも課税され二重課税が生じる場合は、外国税額控除を適用できるケースがあります。
国外転出時課税は非常に複雑な制度であり、特に納税猶予を受けるためには出国前の納税管理人選任や担保提供が必須となるため、早めの準備が重要です。
この制度は「出国時に一度精算する」という性質を持っているため、その後の価格上昇分については日本の所得税の対象外となります。
1. 「出国時の時価で税額を確定させる」
この制度は、国外転出(出国)の時点で、対象資産を時価で譲渡(売却)したものとみなす仕組みです。
課税の基準は、税額計算の基礎となるのは、原則として国外転出の時の価額(時価)です。 出国した時点で、その時までの含み益に対する日本での課税関係は一度完結(確定)します。
2. 「上昇後の所得税を回避できる」
出国後にその資産の価値がさらに上がったとしても、その上昇分(値上がり益)に対して日本で追加の所得税が課されることはありません。 日本の税務上、その資産はすでに出国時に譲渡されたものとして処理されているためです。しかも、出国後の時価変動に関して再計算が認められているのは、時価が「下落」した場合には減額の規定があるのみで、時価が上昇した場合に追加徴収を行う必要がありません。
3.マレーシアに出国後の価格が上昇しても、マレーシアでは譲渡所得税はゼロです。